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戦争の違法化 – シリア①

私「みんな、戦争はいつから違法化されたと思う?」


イチロー「戦争の違法化って、何か変じゃないですか?」

ケンジ「そう。戦争は止まらないのになにが違法と言っても意味がない」

ハナ「違法化っていうと、世界政府が戦争を禁止していて、違反すると取締まりがあるっていうイメージよね。そんなのないでしょ?」

私「やろうとした。それが1945年だった」

ハナ「1945年?」

私「国際連合の誕生だ」

ハナ「でも国連は世界政府ではないでしょ?」

私「もちろん違う。国会も政府もない。だが1945年に国連が設置された時、世界警察は創ろうとしたんだよ」

イチロー「やった、石原裕次郎だ」

ケンジ「それは西部警察だろ!」

ハナ「でも世界警察なんて、そんなに簡単にできるの?」

私「簡単ではない。まず、どんな戦争が合法で、どんな戦争が違法かを決める必要がある」

ハナ「えー、合法な戦争なんてあるんですか?」

私「急迫不正の侵害を受け、これを防ぐに他の手段がなく、必要最低限の武力行使を行う。これは合法だ」

ハナ「知ってる!自衛権行使の3原則ね」

私「そうだ(こういう生徒がいて俺はうれしい…)」

ハナ「でも自衛権行使の3原則って、どうやって決まったのかしら」

私「うーん、古くは2~3千年前のインドでこういう議論があったらしいよ」

一同「2~3千年前?先生、それは大雑把!」

私「戦争みたいな酷いことが、絶対に許されないのか、許されるとしたらどんな時な

のか、という疑問は大昔からあったっていうことだ」

ハナ「自分の身を守ったり、家族を守るのは当たり前よね。でもどこまでが自衛なのかしら」

私「何が急迫不正の侵害なのか、武力以外の手段で本当に防ごうとしたのか、必要最低限の武力とは何か、だれかが決めなくてはならない」

ハナ「そんなに大切な事をどこで決めるんですか?」

私「安保理だ」

アンポリ「ミャー」

私「国連憲章で初めて、戦争を含む武力行使一般が禁止された。国際社会の合意としてね」

ハナ「そこまでくるのに2~3千年かかった…」

私「そうだ。その上、自衛の武力行使にも歯止めがかかったんだ。自衛権の行使は許される。ただし、国連軍が展開するまでの間だけっていう形でね」

ハナ「国連軍がくるまではOKって言われても、国連軍はいない」

私「そう。だから国連憲章の第7章は空文と化した。第7章の43条に特別協定というのがあって、国連加盟各国は、その軍隊の一部を提供することが定められている」

イチロー「やったー!世界警察だ!」

ケンジ「夢の世界警察だろ。喜ぶなよ」

私「そう。未だに43条特別協定はどこの国とも結ばれていない」

ハナ「誰が世界警察の責任者だったんですか?」

私「安保理だ」

アンポリ「ミャー」

私「安保理の意見の不一致でシリアに強制行動を取れないっている話はしたよね?」

ハナ「コフィ・アナンが怒っていたわ」

私「世界警察が出来なかっただけでなく、保護する責任原則に基づく強制行動も、安保理の不一致で実効に移せない」

アンポリ「ミャー」

私「いやアンポリのせいじゃない。この話の続きはまた明日にするよ」




つづく

犬塚直史(いぬづかただし)