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赤十字国際委員会の父アンリ・デュナン

超国家的な組織として一番最初に浮かんでくるのは赤十字国際委員会
(International Committee of Red Cross, ICRC)です。

そして赤十字国際委員会の父と呼ばれているのがアンリ・デュナンです。

少年A「えー、それって日赤病院のことじゃん。サンダーバードよりすごい話っていうのは嘘か?それとも、日赤病院の地下に秘密基地があるのか?」

私「秘密基地はないっていってるだろ!」

少年B「アンリ・デュナンはスパイダーマンか?」

私「もう、お前をクモの糸で巻いてやろうか!」

赤十字と名のつく組織は三つあり、それぞれ深く関係しています。

①赤十字国際委員会(ICRC)
②国際赤十字連盟(IFRC)

そして
③各国の赤十字社・赤新月社です。

日赤病院などでおなじみの日本赤十字社は3番目の「各国の活動」に入ります。全国47都道府県にある支部、病・産院、血液センター、社会福祉施設などを拠点に、幅広い分野で活動しており、5万人以上の社員がいる大きな組織です。

こうした各国の赤十字が世界186ヶ国に存在します。

少年A「社員5万人!かける186カ国で900万人の組織か。やっぱりサンダーバードだ!」

私「勝手に計算するな!」

少女A「税金もいっぱいつかうだろうなあ」

私「それは残念でした。すべて寄付金で賄われてるんだ」

少年B「国連もなかなか良いことしてるじゃないか!」

私「赤十字は国連機関ではありません!」

そうなんです。
赤十字は国連機関ではありません。

アンリ・デュナンというスイス人のビジネスマンが始めた単なるNGOなんです。

もっとも、日本では日本赤十字社法という国内法と、国際的にはジュネーブ諸条約という条約でその活動が規定され、広く認められているところが普通のNGOとの違いです。

彼はこの功績を認められて1901年に第一回のノーベル平和賞を受賞しています。
それにしてもごく普通のNGOがここまで大きく育ったのはどうしてだと思いますか?

少年A「ビジネスマンとは仮の姿で、サングラスをするとマン・イン・ブラックに変身するのか!」

少年B「アンドロメダ星雲から派遣された地球救援隊員か!」

少女A「愛が地球を救うのよ」

少年B「そーいう問題じゃないだろ!」

少年A「スパイダーマンも恋人がいるぞ」

私「(このガキ共をボディスラムしてやりたいが..)そうですね。皆さんの言っていることは全て正しいといえます」

一同「えーっ」

私「つまり、たった一人の個人が始めたNGOが、場合によっては国連組織よりも大きな活動をするようになったのです。宇宙人の眼で地球の状態を見ていたに違いありません。(あー、苦しい)」

そうなんです。

国連は主権国家の集まりであり、基本的には政治的機構です
加盟各国の利害が対立して効果的な決定や活動ができないことはしばしばあります。

例えば、タリバン政権下のアフガニスタンで、一時期国連要員がすべて国外脱出しましたが、そのような治安状況でも赤十字は国内に留まり、医療救援活動を継続しました。
それは長い歴史と実績の積み重ねの中で赤十字活動の中立性と非政治性が武装集団にも理解され、安全が保障されたからでした。

また、国連はすべての国に拠点をもっている訳ではありません。

しかし 赤十字は全世界の国々に県や州単位で支部をもち、きめ細かい活動を実施できるネットワークをもっています。
例えばネパールの山間僻地にも赤十字支部をもっています。

ユニセフ(国連機関)がネパールで活動する時には、末端組織のない国連に代わって、ネパール赤十字の地方支部ネットワークを活用して事業が行われてい
ます。(注釈1)


少年A「何か地味なんだよなあ..」

少年B「うーん、俺もやっぱりサンダーバードが良いなあ」

少女A「何言ってるの素敵じゃない。ナイチンゲールと同じよ!」

少年A,B「ナイチンゲールは関係ないだろ」

私「いや、関係大ありなんです!」

1872年にアンリ・デュナンがロンドンを訪れた時に彼はこう言っています。
「私は赤十字活動の創設者として、そしてジュネーブ条約の起草者として知られていますが、

ますが、実はこの条約制定の名誉はあるイギリス婦人のものです。

彼女の名前はフローレンス・ナイチンゲールです。

私が1859年にイタリア戦線に行ったのは
(訳注:この経験をもとに「ソルフェリーノの思い出」を執筆)ナイチンゲール
女史のクリミア戦争での活躍に触発されたからに他なりません。」(注釈2)


少女A「まぐれ当たり!でも敵味方の区別無く看護したんでしょ?」
私「その通り!(やっと報われた気持ちだなあ。話が進みそうだ..)」

そうなのです。
ナイチンゲールの活動も赤十字の活動も敵味方の区別をしません。
つまり国境を越えているのです。この点についてイギリス赤十字はこう書いています。

“今日に至るまで赤十字活動の中核にある中立性の原則は、フローレン
ス・ナイチンゲールの苦悩に対する考え方と深く結びついています。

彼女はこう言います。
「人間の苦悩は通常の価値を超える。苦悩が続いている所には善悪も価値も敵味方も存在しない。苦悩している被害者はそうした人間社会の区別や判断を超えるのです。救済に必要なのは苦悩しているという事実だけなのです。」”

少年A「何だか分からないが、かっこ良すぎ!とりあえずここは負けとくぜ。でも、地球防衛隊は必ず俺がつくって見せるぞ!」

こうしてICRC赤十字国際委員会のメンバーは、世界の紛争地域に丸腰で入って行きます。

時には犠牲者も出します。
それでも武器は持ちません。どの国にも属さず、政治的な意見も持たず、誰の味方もせず、ただ被害者の救済だけを行う中立性が武器なのです。

どんな紛争地域でもICRCだけは最後まで活動を続けることができるのはそうした訳なのです。

少年A「そうか、最新兵器もっているサンダーバードよりも勇気があるんだ!」

少年B「うーん、違う勇気だよね。でもやられっぱなしなんだろうか?」

少女A「それじゃ力の強い方がいつも勝ちそうね」

私「いいところに気がついたね。そうなんだ。中立性をもって被害者の救済だけを行う赤十字も、第二次世界大戦時のホロコーストでは失敗した、といわれているんだ。連合軍にもナチにも加担しないで被害者救済を続けた。でも、虐殺を防ぐことはできなかったんだね。もちろん、ホロコーストを防ぐのは赤十字の責任ではないよ。それでも、現場にいて残虐行為を目の当たりにしている赤十字には証言することも求められている、という考え方が生まれたんだ。それが国境なき医師団の創設につながったんだよ」

そうです。
中立性を犠牲にしても、許し難い犯罪を犯している人間を告発し、証
言するか?という問題です。


次回は証言する道を選んだ国境なき医師団の話です。