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東インド会社:時代を画した国営企業

エコノミスト誌電子版20111217
http://www.economist.com/node/215417531228日アクセス)
The East India CompanyThe Company that ruled the waves
エコノミスト誌に17世紀の東インド会社と現代の中国を重ね合わせる面白い記事が載っている。
State-controlled companies account for 80% of the market capitalisation of the Chinese stockmarket, more than 60% of Russia’s, and 35% of Brazil’s. They make up 19 of the world’s 100 biggest multinational companies and 28 of the top 100 among emerging markets. (snip) Thirteen of the world’s biggest oil companies are state-controlled. So is the world’s biggest natural-gas company, Gazprom.
中国では株式市場時価総額の80%、ロシアでは60%、ブラジルでは35%を国営企業が占めている。こうした国営企業の28社が世界の多国籍企業トップ100社の仲間入りをしている。(中略)世界最大の石油会社の内13社は国営、世界最大の天然ガス会社も国営だ。

The Company created a powerful East India lobby in Parliament (snips) The Company was just as adept at playing politics abroad. It distributed bribes liberally: the merchants offered to provide an English virgin for the Sultan of Achin’s harem, for example, before James I intervened.
17世紀の)東インド会社はイギリス国会で強力なロビー活動を展開した。(中略)この国営会社の商売人は、アフガニスタンの暴君のハーレムに英国の処女を贈呈しようとしてジェームス一世に止められた事があるが、同じ位の熟練度を持ってイギリス国内でも自由に賄賂を使っていたのである。

C.N. Parkinson summarised how far it had strayed, by 1800, from its commercial purpose: “How was the East India Company controlled? By the government. What was its object? To collect taxes. How was its object attained? By means of a standing army. What were its employees? Soldiers, mostly; the rest, Civil Servants.”
その後この国営会社が商行為からどれくらいの深みに迷い込んだか、1800年までにC.N. パーキンソンは次のように要約した。「東インド会社はどのように支配したか?政府によって。目的は何だったか?徴税。どのように目的を達成したか?常備軍によって。従業員は誰だったか?ほとんどが軍人、残りは国家公務員」。

時代遅れの「グレート・ゲーム」

 国営企業のやることは今も昔も変わらない。例えばアフガニスタンでは19世紀から20世紀初頭にかけて、北に帝政ロシア、南に英領インド帝国が対峙して中央アジアの覇権を争った。いわゆる「グレート・ゲーム」である。シルクロードの通り道、そしてインドへのアクセスであったこの地を押さえる事は軍事的にも経済的にも最重要課題であった。そんな場所で米国は10年を超える戦争を今も戦っている。
 当初は9/11後の自衛戦争の体裁があったが、今はその理屈が通らない。日本の国会でこの点が問題になった時には「相手国政府の要請による治安維持活動」などと苦しい答弁がされたが、要は米国の国益をかけた戦いである。オバマ大統領は2014年までの撤退を表明したが、肝心のカルザイ政権は汚職の蔓延などで自国民にさえ全く信頼されていない。

 そんなアフガニスタンで中国は2008年には銅採掘の権利を、今年になって原油採掘権を獲得した。銅採掘は経済プロジェクトとしてはアフガニスタン史上最高価格の約3000億円(1ドル100円換算)で落札している。また、鉄やレアアースなども豊富にあることが旧ソビエト連邦や最近のアメリカ調査団の調査によってもあきらかになっており、その埋蔵量は100兆円を超えるといわれている。
 世界のエネルギー・資源地図を変化させる巨大な埋蔵量だ。そんな中での中国の動きに、米メディアは「アメリカのランチを中国が食べている」と揶揄している。ランチの横取りというと聞こえが良いが、要はアメリカ政府と中国国営企業による時代遅れの「グレート・ゲーム」である。